稽古

 雨の中,詩吟の稽古に行ってきたが,あまり思わしくない.師範の言葉に,一芸に秀でることの尊さを身にしみて感じた.何か一つでいい,何でもいいから何か一つ,打ち込めるものが必要だ.
 「腹に重心を落とし声を出す」,文章で書くと簡単なことだが,実際にやってみるとかなり難しい.テキストから学ぶことはできないので師匠から盗むほかない.ふと,アナログとデジタルの対比が頭に浮かんだ.デジタルはコピーを残すことができる,テキストで学ぶことができる.アナログは完全なコピーを残すことができない,無形で受け継ぐまたは創造するしかない.
 何となく思ったのは,天才はアナログ的であり,秀才はデジタル的だということ.天才はほとんどいないというか,定義によっては存在しないのかもしれない.ほとんど全ての人に言えることは,不連続を微小化してゆく不断の努力が尊いということだろう.何かを成し遂げることがそういうことなのだとしたら,一芸に秀でることは実に尊い