眠れぬ夜は飛ぶに限る

飛ぶ

 雨が降る眠れない夜,ふと山の中の貯水池について思いを巡らした.この瞬間,私は紛れもなくこの貯水池にいたのだと思う.自室にある肉体という制約を取り除いてしまえば行きたいところに飛んで行けるのだ.この場合,「肉体という制約を取り除く」とは,肉体があるところに自己が存在するという定義の変更のことだ.定義は好きなようにすればよく,どのように考えるのも自由だ.もっとも,一般的な定義も同時に持ち合わせていなければ少々危険な人だと思われてしまうが.

人と人間

 「〜である前に一人の人間である」という表現について.「〜」はたとえば母など他人との関係や何らかの役割を持った社会的な生き物としての自分である.それに対して「一人の人間」とは,自然人としての生な自分であり,この場合は「人間」というより「人」という表現の方が的確だと思われる.この言葉が教えるのは,先に自然人としての自分があり,社会的な立場に立つ人間としての自分は後付けであることだ.当たり前なのかもしれないが,自分というものを考えるときにこのことは重要だと思った.