夢に出てきた死に臨んだ人たち

 何かを話し合う四人の武士,その中の一人・Aが「俺はやる,おまえたちは来るな」と言ってその場を離れた.Aの興奮につられてBもそれに続き,残された二人・C,Dは憂いの表情で彼らを見送った.
 場面はAとBの切腹の場へ.うろたえながら「俺を先に」とBがせがみ,Aは落ち着いて「いわんこっちゃない」それを認めた.作法を介錯の役人に尋ねると木刀をあてがい首を差し出すだけでよいという.安心したBは「先に行くぞ」と言い,首を落とされた.Bは死にながらも自分が死んだことを他人事のように実感していたところ,意外にもAが動揺し,しかも泣きわめき始めた.すると,Bはすでに事切れているにもかかわらず,Aの手を握った.Aはその手を必死に掴みながら首を落とされた.
 私は第三者としてこの夢を見ていたが,C,B,Aの順でそれぞれの主観に立ち,大変微妙な気分になった.首を打たれた遺骸に手を握られるのはすごく怖いのではと思いつつ,殺伐下風景の中に見る弱い人たちの優しさに少し感動した.